【おすすめ展覧会】生誕150年記念・川合玉堂展

【おすすめ展覧会】川合玉堂展おすすめ展覧会

富山県水墨美術館で開催中の「生誕150年記念・川合玉堂展」を観てきました。

近代日本画壇の巨匠、川合玉堂の生誕150年を記念した展覧会です。

川合玉堂(かわいぎょくどう)

1873年~1957年。
愛知県一宮市に生まれ、少年期は岐阜で過ごし、その後、京都、東京と転居を重ねる中で、円山四条派や狩野派などの技法を習得。
それらを融合して、伝統的な墨の表現、線の表現を、近代日本画の中によみがえらせた独自の画境をひらき、詩情豊かな風景画の名作を数多く残した。

(富山県水墨美術館HPより)

ネコ画伯はこの展覧会で川合玉堂を見る目が変わったよ!

ネコ画伯的感想

【見どころ1】初期から晩年に至る展示で絵の変化がわかる

本展は玉堂の作品約40点を前期・後期に分けて展示しています。

作品数は多くありませんが、初期から晩年にいたる作品がそろっており、若いころから順に絵の変遷をたどることができます。(絶筆もある!)

正直なところ、これまで私は玉堂の絵に対して

水墨画っぽい地味な絵

という印象をもっていました…

そんなに作品を観たわけでもないのに、「白黒!」「水墨画っぽい!」と思うと大体一緒なものに見えてしまうのです、ネコ画伯は。

でも今回、ギャラリートークを聞きながらじっくり作品と向き合ったところ、ようやく玉堂の魅力がじわじわと伝わってきました!

図録の写真でいくつかご紹介したいと思います。

《陶淵明之図》1902年頃 玉堂美術館

29歳ごろの作品。

線の太さ・細さ、墨の濃淡が駆使されているのが素人目にもわかります。

よく見ると、頭に被っている布の下に後頭部がうっすら透けて描かれていたり、切れ長の目の鋭い線が、個人的にグッとくるポイントです。

《二日月》1907年 東京国立近代美術館

34歳の作品。

今回私が最も衝撃を受けた作品です。

「二日月」とは、三日月の一日前の、糸のように細い月のことだそうです。

その二日月が画面中央に小さく浮かんでいて、それを輝かせるために、他すべての要素が完璧なバランスで描かれている、という風に感じました。

はっきりとした線もあればぼやけた線もあり、墨のにじんでいるところ、もやのようなところ…玉堂が学び身に着けてきた技法が混ざり合い、見事に発揮された作品ではないでしょうか。

水墨画のように見えますが、実はうっすらと色が使われています。

玉堂は「線描と色彩の融和」を目指していたそうです。

…と聞いてもピンときませんが、ネコ画伯は一目見て惹きつけられ、ずっと見ていられると思いました。

東京勧業博覧会で一等賞を獲得し、玉堂の出世作と言われているそうです。

《朝もや》1938年 東京国立近代美術館

65歳の作品。

ギャラリートークで教わったことの一つは、玉堂は自然を描くとともに、そこに生きる人や動物を描きこんでいることが多い、ということです。

たしかに、壮大な自然の絵の中にも、人が歩いている姿が小さく描かれたりしています。

それを見つけると、なんだかほっこりしますね。

《春光》1948年 個人蔵

75歳の作品。

晩年の絵からは自由さ・おおらかさが伝わってきて、すごく私は好きです。

構図が面白い本作は、ジグザクの木に桃色の花がちょんちょんと描かれているのが可愛らしく、色合いからも春のあたたかさが感じられます。

《澗底》1951年頃 名都美術館

78歳ごろの作品。

この絵でも、岩が力強い線でありながらゆったりとして、水しぶきが鋭くも軽やかで、達人の描き方という感じ。

思うに、川合玉堂の絵の魅力というのは、わかりやすい華やかなものではなく、静かにじっと向き合ったときに、より感じ取ることができるのではないでしょうか。

若い頃から写生を欠かさず、円山四条派・狩野派などの技法を学び積み上げてきた玉堂。

作品の細部を見れば見るほど、技術に裏打ちされた説得力・工夫・味が伝わってくる気がします。

【見どころ2】玉堂の真摯さが伝わる写生

作品に加えて、会場では写生(画巻3巻、写生帖20冊)も展示されています。

生涯自然を愛し、写生を続けた玉堂。

細部まで描きこまれた写生を見ると、自然そして絵に対して真摯に向き合ってきた玉堂の姿勢・熱心さを感じます。

面白いのが、15歳のときの写生で、鳥を描いた絵のそば、羽のあたりに

「下3枚ノ右ノスジヲ付ケシハアヤマリ」

と書いてあるんですね。

この時点で絵はかなり上手いんですが、こんな注釈をわざわざつけるところがまだまだ少年らしい感じがして、可愛らしくないですか?

その次に17歳のころの写生を見ると、注釈はなくなり、格段に絵が上達しているのに感心させられました。

【見どころ3】富山県水墨美術館を楽しむ

今回よかったのは玉堂作品だけでなく、富山県水墨美術館自体も、すばらしかったです。

  • 広大な庭…ガラス窓から緑の庭を眺めながら長い廊下を歩くのが気持ちいい!
  • 茶室…趣ある茶室で休憩できる(下記ミュージアムカフェの項目参照)
  • 常設展示…横山大観・下村観山・東山魁夷など、名だたる画家の水墨画が展示されている

企画展示室はわりとコンパクトなので、鑑賞後に美術館をゆったり巡るのも楽しいと思います。

ネコ画伯は、常設展示室で飾られていた松尾敏男《連山流水譜》に見入ってしまいました。

新しく収蔵したものらしく、絵はがきがなかったことが残念でしたね。

ミュージアムグッズ

図録(2,000円)と絵はがき(120円)を買いました。

図録には会場では見切れなかった、玉堂の略年譜が入っていて助かりました。

欲を言えば、写生も載せて欲しかったですね。

ミュージアムカフェ

富山県水墨美術館には茶室「墨光庵(ぼっこうあん)」があります。

富山県出身の棟梁が親子で完成させた、本格的数寄屋建築の茶室だそうです。

中では、600円で抹茶とお菓子のセットをいただくことができます。

お菓子は時期によって変わるらしく、今回は「清流」という夏らしいお菓子でした。

抹茶もそれほど苦みを感じず飲みやすい味で、何より座敷ではなく立礼(りゅうれい)席という、椅子に座る形式なのがありがたかったです。

雰囲気の良いすてきな建築・内装です。

掛軸の書は「清流無間断」(清流に間断無し)と書かれているそうです。

いただいたお菓子の名前ともリンクしていて、粋ですね~。

展覧会まとめ

ここまでで散々語りつくしたので、あとはもうこれだけ言わせてください。

  • 玉堂をよく知らない人は、ぜひ行ってみてください
  • 玉堂の魅力を知っている人は、当然行ってください
  • せっかくの生誕150年記念なので、ぜひ行ってみてください

どうしても行けない人も、生誕150年の記念で今年は全国各地で玉堂展が開催されるみたいだよ!

調べてみてね~!

生誕150年記念・川合玉堂展
2023年7月14日(金)~9月3日(日)
富山県水墨美術館

タイトルとURLをコピーしました